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電磁波戦

見えない戦場の意思決定
原書: Cognitive Electronic Warfare :An Artificial Intelligence Approach

紹介

これまでのいかなる戦闘とも違い、人間にとっては見えざる戦闘領域。ハイテク武器が一瞬にして無力化する脅威とも言える。この攻撃を重要インフラに向けた時、文明社会は崩壊する。電磁波戦における可視化の方法とは?
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コグニティブ電子戦システムでは、プログラムされていない敵のシステムをその場で学習し対抗する。その技術は、ソフトウェアとアルゴリズムが中心で、GPU 等の適切なハードウェアにより実現する。高品質な検出を行うセンサー、妨害技術の有効性のリアルタイム評価、複数プラットフォーム協調のためのネットワーク技術、予備検出データの信号処理など多くの要素を含む。コグニティブ電子戦の基礎レベルでの実装は比較的容易で、米海軍の ALQ-214(V)4/5 RFCM(Radio Frequency Countermeasure)への ARC アルゴリズムへの適用等が行われてきた。一方、初期のコグニティブ電子戦システムの技術成熟度レベル(TRL)は高いとは言えず、測定系の複雑化、電子支援と電子攻撃の結合度増加、電波源処理の段階化・階層化、システム学習情報の保持、後のミッションでの再利用、システムアーキテクチャレベルの再構築等の課題があった。周知のように、昨今の AI や機械学習技術の進歩には目覚ましいものがあり、AI アプローチによるコグニティブ電子戦は、従来のコグニティブ電子戦の課題を解決する最も強力な手段である。本書では、コグニティブ電子戦の基礎、目的関数、機械学習の基礎、コグニ ティブ電子戦における電子支援・電子防護・電子攻撃、電子戦闘管理、リアル タイムの任務遂行中の計画立案・学習、データ管理、システムアーキテクチャ、試験・評価、初心者のための導入アドバイスなど、コグニティブ電子戦システ ムの要素技術を網羅的に判りやすく解説している。電子戦の専門家、AI の専門家、通信の専門家はもとより、これらのどの専門家でもない技術者、運用者、安全保障関係者は本書により各要素技術の概要を短時間で習得できる。アカデミ アの研究者にとっては、ゲーム等とは違うミッションクリティカルな最適化シ ステム構築のガイドとなる。本書は、中国の『認知電子戦の原理と技術』(2018 年)に続いて、西側世界では初めてのコグニティブ電子戦に関する成書の刊行と、著者の実用化ノウハウに基づいた共通フレームワーク(意思決定の AI アプローチ)を提示するものという点でも意義深い。深層学習による画像認識や自動目標認識については、軍用分野でも一般的適用事例であるが、機械学習等による意思決定の最適化問題の事例紹介は、まだ少なく、今後の指揮統制の意思決定問題への重要な参考事例になると考える。

2022 年 8 月吉日
AOC 日本支部 EW 研究会幹事
三菱電機株式会社
情報技術総合研究所
スマートセンシング技術部 技術統轄
河東 晴子博士

前書きなど

コグニティブ電子戦は全体像が大きすぎて、どこから始めればよいのか分からないとよく耳にする。わたしはいつも次のように言っている。「AI は数学のようなものであり、いつの日か、どこにでもあるものになるだろう」。役割や年齢に関係なく、だれもがAI について十分に知っており、AI が日常生活の問題のどこに当てはまるかを知る必要がある。AI は単なる「自律型車両」や「ターミネーター」ではない。AI は、カメラでの顔認識、買い物時の購入の推奨、そしてハリケーンの進路予測などができる。数学や物理学がEW システムに属しているように、AI はEW システムに属している。本書は、この道を照らし、従来の方法だけでは解決できないEW の問題を解決することへの情熱に火をつけることを目的としている。ジュリアとわたしは、AI の使用方法と使用箇所について詳しく知りたい、無線周波数(Radio Frequency [RF])に携わる人々(EW、コグニティブ無線、および/またはコグニティブレーダーの専門家)向けにこの本を書いた。わたしたちの目標は、EW システム設計者がAI と機械学習(Machine Learning [ML])ソリューションを選択する際のトリアージとガイドを支援することである。MLは重要なコンポーネントであるが、AI は単なるML 以上のものである。AI は通信とレーダーの間、あるいは電子攻撃と電子防護の間を行き来しているように見えるが、実際そうなのだ。AI の観点からは、これらの問題は本当に交換可能である。これら四つの分野すべてで同じAI 技術を使用している。電子戦戦闘被害評価(EW Battle Damage Asessment [EW BDA])といったいくつかの重要な違いがあるが、AI はこれらのアイデアをまとめ、共通する問題を解決し、共存から協調設計に移行することができる。本書では、BBN 戦略最適化器(BBN Strategy Optimizer [BBN SO])を例にとって説明する。BBN SO は、任務に関連した時間スケールで任務中学習を行い、新しい環境に対処する方法を学習し、厳しいリアルタイムの最適化と緩和戦略を選択するための意思決定を行う通信電子防護の取り組みである。例7.1は本質的な概念を示しており、論点の多くはこの研究から派生した例を使用している。
アーロン・ウォーカー(AaronWalker)、クリス・ガイブ(Chris Geib)、マット・マーケル(Matt Markel)、ビル・コンリー(Bill Conley)、ピート・リース(PeteReese)、歐陽峯(Feng Ouyang)、ショーン・マックエイド(Shaun McQuaid)、そしてアーテック・ハウス(Artech House)の匿名の査読者など、本書に具体的な方法で直接貢献してくれた人々に感謝したい。わたしが無線周波数のため
のAI の問題を考えるきっかけとなったのは、最初の問題を提示してくれたクリス・ラミング(Chris Ramming)と、ハネウェル(Honeywell)社の社内研究予算から最初の取り組みに資金を提供してくれたジム・フリーバーサー(JimFreebersyser)である。この2 人がいなければ、わたしはこの問題に関心を持ち、やり遂げる勢いを育むことはできなかっただろう。グレッグ・トロクセル(Greg Troxel)とジョン・トランキーリ(John Tranquilli)は、この奇妙なAI人間であるわたしを辛抱強く教育してくれて、RF をどのように正しく記述し、この分野で物事を難しくしているものについてどのように考えるかを教えてくれた。―カレン・ジータ・ヘイグ(Karen Zita Haigh)-序文より-

著者プロフィール

カレン・ジータ・ヘイグ (カレン ジータ ヘイグ) (著/文)

◆カレン・ジータ・ヘイグ(Karen Zita Haigh)博士は、コグニティブ電子戦と組み込みAIの専門家・コンサルタントである。彼女は、通信と計算資源が限られた物理システムで、高速なハードリアルタイムの要件で動作させることに重点を置いている。最近、彼女は『Cognitive EW: An Artificial Intelligence Approach』をジュリア・アンドルーセンコ氏と共に執筆。現在では世界中で一般的になっている3つの分野、(1)自律型ロボットの閉ループ計画立案と機械学習、(2)高齢者介護のためのスマートホーム、(3)認知型RFシステムのパイオニアである。また、ミッションクリティカルシステムのための組み込みAI、迅速なリアルタイム任務内学習のサポート、現場でのAIの保証といったさまざまなオンラインコンテンツを作成している。コグニティブ電子戦に関する彼女の講座は、米国電子戦学会(Association of Old Crows)を通じて提供されている。オタワ大学でコンピュータサイエンスBScの最優等位(summa cum laude)を取得。カーネギーメロン大学でAIとロボティクスを中心としたコンピュータサイエンスで博士号を取得。IEEEおよびアジア太平洋AI協会(AAIA)のフェロー、IEEE AES学会の特別講師。
https://sites.google.com/site/kzhaigh
https://www.linkedin.com/in/karenhaigh/

ジュリア・アンドルーセンコ (ジュリア アンドルーセンコ) (著/文)

◆ジュリア・アンドルーセンコ(Julia Andrusenko)は、ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所(APL)の上級通信技術者で、戦術通信システムグループの主任技術者である。通信理論、無線ネットワーキング、衛星通信、RF 伝搬予測、通信システムの脆弱性、通信システムのコンピューターシミュレーション、進化計算、遺伝的アルゴリズム/プログラミング、MIMO、およびミリ波技術の分野で19 年以上の経験を有する。また、さまざまな先進的な商用通信システムと軍用データリンクのためのEW 手法の開発にも豊富な経験を有している。アンドルーセンコは多くの技術論文を発表しており、『Wireless Internetworking:Under-standing Internetworking Challenges』という書籍も共著でWiley/IEEE Press から出版している。また、フィラデルフィアのドレクセル大学で電気工学の学士号と修士号を取得している。IEEE 通信学会の会員であり、IEEE 1900.5 Working Group on Policy Language and Architectures for Managing Cognitive Radio for Dynamic Spectrum Access Applications の投票メンバーでもある。

木村 初夫 (キムラ ハツオ) (翻訳)

◆木村 初夫(きむら はつお)
1953 年、福井県生まれ。1975 年金沢大学工学部電子工学科卒。現在、株式会社エヌ・エス・アール上級研究員、株式会社NTT データアドバイザー。1975 年日本電信電話公社入社、航空管制、宇宙、空港、核物質防護、危機管理、および安全保障分野の調査研究、システム企画、開発担当、株式会社NTT データのナショナルセキュリティ事業部開発部長、株式会社NTTデータ・アイの推進部長、株式会社エヌ・エス・アール代表取締役歴任。共訳書に『中国の進化する軍事戦略』、『中国の情報化戦争』、『中国の海洋強国戦略』(以上原書房)、『知能化戦争』(解説を執筆)、『ロシアの情報兵器としての反射統制の理論』、『AI 海戦』(以上五月書房新社)がある。訳書に、『マスキロフカ』(五月書房新社)がある、主な論文に「A2/AD 環境下におけるサイバー空間の攻撃および防御技術の動向」、「A2/AD 環境におけるサイバー電磁戦の最新動向」(月刊JADI)等がある。

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