米軍基地と環境汚染
書評掲載情報
2024-06-22 | 朝日新聞 朝刊 評者: 森啓輔(専修大学准教授・社会学) |
紹介
日本人の知らないもう一つの真実
基地だけではなく、環境も犠牲に。沖縄の歴史と真実を直視せよ!
◉ベトナム戦争での枯葉作戦に使用された「エージェント・オレンジ」はその原料が、わが国で製造されていた疑いがあり、また沖縄のやんばるの森や米軍基地で実際に使用されていた。その歴史的事実を殆どの日本人は知らない。いや善良なるアメリカ人達も知らない。
◉そして、この「エージェント・オレンジ」が米国からベトナムへの往路も帰路も、沖縄を経由し、沖縄の環境を汚染した。あろうことか沖縄の人々の健康をも損なうリスクがあったのだ。
◉しかし米国は公式見解としてその事実を認めておらず、日本政府もそれを受け入れている。また、米国はベトナムの人々の枯葉剤による健康被害も認めず、一方で米兵の健康被害は認めている。
目次
まえがき
第一章❖ ベトナム戦争と環境汚染
第二章❖ 在日米軍基地
第三章❖ 在日米軍基地に係る環境汚染
第四章❖ 米軍普天間飛行場の辺野古移設に係る環境問題
第五章❖ 在日米軍基地の環境管理
第六章❖ 米軍基地の環境管理の行方
参考文献
あとがき
版元から一言
本書は米軍基地がもたらす環境汚染の本質に迫る。著者は冒頭「ベトナム戦争と環境汚染」で、枯葉作戦に使用されたエージェント・オレンジ(枯れ葉剤)による環境汚染・健康被害から語り始める。このエージェント・オレンジが米国からベトナムへの搬送する際、往路も帰路も沖縄を経由し環境を汚染した。さらに沖縄の人々の健康を損なったことを明らかにする。しかし米国はその事実を認めようとしない。沖縄に駐留した米兵の健康被害は認めているのに。
ここにこそ、米軍基地がもたらす環境汚染の最大の問題があり、それは半世紀を経た今日も変わっていない。沖縄県民45万人が飲んでいる北谷浄水場の水が有機フッ素化合物で汚染していることが判明したのは2016年だった。汚染源は嘉手納基地以外には考えられず、沖縄県企業局が嘉手納基地への立入調査を求めてきたが、今日に至るまで調査は実現していない。さらに「諸外国における米軍基地の環境管理」と日本におけるそれとの対比は、必読の箇所だ。
桜井 国俊(沖縄大学名誉教授・元学長)の推薦文より抜粋
著者プロフィール
田中 修三 (タナカ シュウゾウ) (著/文)
1952年 宮崎県生まれ。明星大学理工学部教授・工学博士、元副学長。Asian Institute of Technology(AIT)元准教授(在バンコク、JICA 派遣) 東京大学大学院都市工学専攻博士課程修了。専門:水・土壌環境学
主な著書
『土壌の汚染を知る』技法堂出版 2019年、『水環境工学・改訂 3版』オーム社 2014年、『基礎から学べる環境学』共立出版 2013年、『地球環境調査計測事典 第2巻陸域編 2』、フジ・テクノシステム 2003年ほか
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