ザクセンの鉄道博物館
鉄路の上の東ドイツ 久保健(著/文)
<予約販売>こちらの書籍は11月18日発売です。
ドイツ鉄道博物館の奥座敷へようこそ
懐かしさとロマンがあふれるヨーロッパの鉄道物語 使用写真511点。1950年代初期の東ドイツ路線図などの、希少資料が満載
かつて蒸気機関車は、貨車に産業の発展を積み、客車に市民の日常生活を載せて、力強く疾走した。今日では車に主役の座を譲ってしまったが、鉄道は確かに近代社会の勃興と発展を牽引していた。蒸気機関車をはじめとするかつて活躍した花形車両たちの現在の静かなたたずまいは、そうした歴史的事実を眼に見える形で物語る。
その事情は、かつて1949年から1990年まで存在した「東ドイツ」(ドイツ民主共和国、DDR)でも変わらない。むしろ「鉄のカーテン」に隠れて見えなかった旧社会主義国でこそ、そこでの社会や人々の日常がどのようなものだったのかを、鉄道車両は、その社会の外側にいた人々に教え、また内側に暮らしていた人々に思い出させてくれる。
ドイツ語で「東」をあらわす「オスト」(Ost)と「郷愁」をあらわす「ノスタルギー」(Nostalgie)の合成語で「オスタルギー」(Ostalgie)という言葉がある。東ドイツという国家が存在した時代と当時の事物への郷愁を意味する造語だが、現役を引退した鉄道車両はそのオスタルギーの中心的なアイテムだ。 そうした産業上の、あるいは歴史的・文化的な役割を果たしてきた鉄道車両を、近代の産業遺産として積極的に残していこうとしているのが「鉄道博物館」だ。
とりわけドイツ東部のザクセン州にいくつかある鉄道博物館は、「東ドイツ鉄道」時代(1949〜94、日本の国鉄よりも歴史が長い)の車両ばかりではなく、可能な限り時代を遡って古い車両を保存・修復し、静態展示あるいは動態展示している。ザクセン州の州都ドレスデンで毎年春に開催される「蒸気機関車フェスティバル」には、勢いよく煙を吐いて走る機関車見たさに、ヨーロッパ各地から多くの観光客が集まる名物イベントとなっている。
本書は、ザクセン州ばかりではなくドイツ各地の鉄道博物館をくまなく探訪し、史料をあまねく渉猟した著者にして初めて可能な、ドイツ人もビックリの唯一無二の東ドイツ鉄道本である。掲載された511枚の写真から、オスタルギーとともに、海をも越える「鉄オタ」の情熱を感じてほしい。
【目次】
《口 絵》 東ドイツ時代のザクセン地方の鉄道路線図
第1章 州都ドレスデンは鉄道がお好き
第2章 エルツ山地の鉄道博物館 シュヴァルツェンベルク鉄道博物館
第3章 現役のターミナル ライプツイッヒ中央駅の流線形気動車
第4章 工業都市ケムニッツのザクセン鉄道博物館
第5章 フェルドバーン ザクセン鉄道博物館の産業用軽便鉄道部門
《本 文》
第1章 州都ドレスデンは鉄道がお好き
1. ドレスデン蒸気機関車フェスティバル
2. 鉄道博物館の始まりとドレスデン交通博物館
3. 東ドイツの鉄道車両保存
4. 東西ドイツ統合後の車両保存
第2章エルツ山地の鉄道博物館 シュヴァルツェンベルク鉄道博物館
1. シュヴァルツェンベルクをめぐって
2. シュヴァルツェンベルク周辺の鉄道史
3. シュヴァルツェンベルク鉄道博物館の成立に向けて
4. 展示施設としての充実と発展
5. 蒸気機関車50 3616 号機の動態保存
6. 個性豊かな保存車両
第3章 現役のターミナル ライプツィッヒ中央駅の流線形気動車
1. ライプツィッヒ中央駅とは
2. ライプツィッヒ中央駅を歩いて
3. 24番ホームの保存車両とドイツの高速気動車網
第4章 工業都市ケムニッツのザクセン鉄道博物館
1. ケムニッツをめぐって
2. ザクセン鉄道博物館について
3. ザクセン州で製造、運用された東ドイツ国鉄の高速気動車ゲルリッツ形
第5章 フェルトバーン ザクセン鉄道博物館の産業用軽便鉄道部門
1. フェルトバーンとは
2. ザクセン鉄道博物館の産業用軽便鉄道の展示を見てみると
3. 様々な車両の復元作業について さいごに 参考文献
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【前書きなど】
【抜粋】
ドイツ鉄道の奥座敷に足を踏み入れて ドイツには、鉄道博物館(Eisenbahnmuseum)や交通博物館(Verkehrsmuseum)といった鉄道関連の展示施設が各地に存在しており、ニュルンベルクの交通博物館やベルリンのドイツ技術博物館などは、日本でも広く知られている。
しかし旧東ドイツ圏であるザクセン州にも、東ドイツ時代に開館したドレスデン交通博物館はじめ、鉄道博物館が各地に点在しているが、紹介される機会は少なく、なんとももったいなく感じている。ザクセン州の鉄道はニュルンベルクにつづき、ドイツで2 番目に開通しており、路線網を拡大させつつ、チェコとの国境地域に横たわるエルツ山地の鉱山開発や、ケムニッツやツヴィッカウをはじめとした工業都市の発展に貢献し、市民の生活を支えながら、今にいたっている。
ザクセン州は、そんな鉄道を貴重な文化遺産として、後世へ残す意識や活動が一際強いようで、特徴ある外観をした車両やかつての姿そのままの建物が多数保存、展示されている。また展示環境も、ドレスデン交通博物館のように宮殿や寺院が立ち並ぶ市街地中心部のみならず、現役のターミナル駅の一角を保存スペースに転用しているもの、廃止された機関区の扇形庫や転車台といった設備を活用したものなど様々になり、営業路線と接続されている館では、所有している動態保存機関車の運転も実施するなど、各館の個性を際立たせている。………………..
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【著者プロフィール】
■久保 健 (クボ ケン) 1975 年9 月25 日東京都青梅市生まれ。1995 年よりドイツのミュンヘン近郊で暮らし、ドイツ各地の鉄道博物館に足を運ぶ。1997年よりミュンヘン空港内の物流会社で輸出入業務の実習を受け、1998 年3 月帰国。現在は会社員として働くかたわら、ドイツの鉄道博物館や旧東ドイツ地域の鉄道史の調査や発表を行っている。日独協会会員、鉄道史学会会員、東京産業遺産学会理事。
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ISBN:978-4-909542-63-2 C0065
判型:A5判 上製 312頁
発売日:2024年11月18日
¥3,520
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